前回も触れたが、「地域包括診療料1」の診療報酬点数は1660点で、同2は1600点。どちらも月1回算定できる。低くない点数であり、このことは同時に、患者負担も安くないことを意味する。
地域包括診療加算の同意書
新田クリニックは「地域包括診療加算1」を算定している。その点数は、2024年度診療報酬改定で25点から28点に引き上げられた。点数は低いが算定要件や施設基準は地域包括診療料と同じで、けっこう細かい。
算定要件は「患者・家族からの求めに応じ、疾患名・治療計画等の文書を交付し適切な説明を行うことが望ましい」「患者についてのケアマネジャーからの相談に適切に対応」などで、施設基準は「担当医は認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましい」「担当医がサービス担当者会議/地域ケア会議に出席した実績がある」などである。
当院では、この地域包括診療加算を算定する患者には同意書にサインしてもらっている。ある患者に対してこの加算をとることは、その患者のかかりつけ医になることと同義だ。日本はフリーアクセス・自由開業制だから、同一患者に対して複数の医療機関が地域包括診療加算(料)を算定するような事態が起こりかねない。
同意書にサインしてもらうのはこれを防ぐためではあるが、かかりつけ医の役割を明示するためでもある。地域包括診療料に関する説明書や同意書のひな型を基に作成した。
同意書は、まず、かかりつけ医として行うことを明記している。
・生活習慣病や認知症等に対する治療や管理を行います
・他の医療機関で処方されるお薬を含め、服薬状況等を踏まえたお薬の管理を行います
・必要に応じ、専門の医療機関をご紹介します
・介護保険の利用に関するご相談に応じます
・必要に応じ、訪問診療や往診に対応します
・体調不良等、患者さんからの電話によるお問い合わせに対応しています
そして患者と家族に以下をお願いしている。(一部略)
・他の医療機関を受診される場合、お急ぎの場合を除き、担当医にご相談ください
・お急ぎの場合に、他の医療機関を受診した場合には、次に当院を受診した際にお知らせください(他の医療機関で受けた投薬なども、お知らせください)
・健康診断の結果については、担当医にお知らせください
これらを理解してもらったうえで、患者と家族に署名してもらう。まだ始めてから日は浅いが、断られたことはない。皆さん、かかりつけ医を理解してくださっているようだ。
同意書に掲げた、かかりつけ医として行う内容は、なかなか広範だ。治療はもちろん、介護保険の相談に応じ、訪問診療や往診、電話での問い合わせにも対応する。ひな型に基づく内容ではあるが、果たしてどこまでの医療機関がこれを実行できるだろうか。おそらく、在宅療養支援診療所(在支診)なら、これまでも同じようなことをやってきたはずで、それほど苦労はないだろう。
報告制度の1号・2号機能
今年4月から始まった「かかりつけ医機能報告制度」では、かかりつけ医の機能を「1号機能」「2号機能」に分けて定義している。1号は疾患を診療する機能、2号は診療時間外に診療する機能・入退院時の支援・在宅医療の提供・介護と連携した医療提供の4項目からなる。
先述の同意書には、かかりつけ医として行うことを明記しているが、これはつまり、1号・2号機能を網羅したものでもある。かかりつけ医機能を社会に実装化するステップが進んでいることを実感する。
かかりつけ医の役割も固まり、認知されてきた。地域で開業する専門医(耳鼻咽喉科や整形外科など)も、そのまま地域の専門医として活躍できるのが望ましい。私はあなたのかかりつけ医だけど、あなたが骨折したら整形外科の**先生を紹介します、という地域医療のかたちである。それが「面で診る」ことではないだろうか。

新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。