都立日比谷高校では、毎年、卒業生を講師に招き「先輩による授業」(星陵セミナー)を行っている(今年で15回目)。昨年は新型コロナウイルスの蔓延で中止となったが、今年は遠隔方式で3月19日午後に行われ、卒業生20人が講師を務めた。授業を受けるのは同校の2年生であり、生徒は自分が選択する講師の授業を受けるという方式である。
筆者はこの高校の卒業生であり、3年前から……
【筆者紹介】中村秀一(なかむら・しゅういち)
医療介護福祉政策研究フォーラム理事長、国際医療福祉大学大学院教授。厚生労働省老健局長、社会・援護局長、内閣官房社会保障改革担当室長などを歴任。
第8回 神風を待っているのか?
この国は再び神風を待っているのだろうか? と思った瞬間があった。
政府が東京、千葉、埼玉、神奈川の4都県で2週間の緊急事態宣言を延長する、と決めたときだ。ほとんど無策だったからだ。
新型コロナウイルスの新規発生者数の減少には歯止めがかかっていた。下がりきらないのだから延長は当然にしても、さらなる減少に持ち込むには……
【筆者紹介】時不知すずめ(ときふち・すずめ)医療や介護について取材する全国紙記者 週末、川べりの桜のつぼみは固かった。強い低気圧が抜けた週明け、ニュースは東京の桜が満開だと伝え、見に行くと葉桜だった。いつ咲いたのだろう。閉じこもりがちだった昨年、季節の記憶はあいまいだ。今年も再び、そんな年になるのだろうか。時間を失っているような焦りを感じた。
第5回 この国の医療のかたち(下)
■独立後の医療政策
1951年9月8日、GHQによる占領が終了する。前年、1950年からの朝鮮特需で持ち直しはじめていた日本経済は、徐々に、欧米先進国の背中を見ながらキャッチアップ軌道に乗り始めていく。
高度経済成長期を迎えると、産業界の資金需要は活発となっていった。銀行が高い金利で融資を行うことができる大企業を私的病院よりも優先していくのは当然で……
【筆者紹介】権丈善一(けんじょう・よしかず) 慶應義塾大学商学部教授
専門は社会保障・経済政策とりわけ再分配政策の政治経済学。「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年8月)の「医療・介護分野の改革」パートを起草した。
第5回 この国の医療のかたち(上)
■なぜ日本では多くの病院が私的所有なのか
日本医療を他の国々と比べた特徴が、新型コロナウィルスの影響の下で注目を浴びている。日本の医療提供体制については、目下、改革が進められている。ここ数年展開されていた提供体制の改革の青写真が描かれていた『社会保障制度改革国民会議』(2013年)の報告書には、「医療問題の日本的特徴」という項目があり、次のように書かれている。
■医療問題の日本的特徴
日本の医療政策の難しさは……
【筆者紹介】権丈善一(けんじょう・よしかず) 慶應義塾大学商学部教授
専門は社会保障・経済政策とりわけ再分配政策の政治経済学。「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年8月)の「医療・介護分野の改革」パートを起草した。
第10回 訪問診療を初めて経験した研修医は「すごい」と思った
■独居の認知症女性への訪問
新田クリニックは研修医を受け入れている。同じ2次医療圏に属する総合医療センターに在籍するK医師がおよそ1カ月、研修医として地域の訪問診療を経験した。急性期医療に携わるK医師にとって、訪問診療は初めての体験であった。
K医師は、訪問した在宅患者のなかでとりわけ印象的だったのは、90代女性のTさんだという。Tさんは独居で、軽度認知症がある。転倒して外来受診ができなくなったため……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
第5回 コロナ時代に「人が集まる地域づくり戦略」でよいのか?
前回は、通いの場を中心とした地域づくり戦略の抱えている課題、特に生活支援機能の見落としについて指摘しましたが、今回は、もう少し具体的な手法の面でのアプローチとしてICTやSNSの活用について可能性を考えていきたいと思います。
■先行き不透明な中での地域づくり戦略の再検討
2020年4月の緊急事態宣言で、高齢者の「通いの場」の多くは休止に追い込まれました。宣言解除後には、住民主体だからと自発的に再開した場もあったものの……
【筆者紹介】岩名礼介(いわな・れいすけ) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社主席研究員、共生・社会政策部長
自治体支援を専門とし、在宅医療・介護連携推進事業や生活支援体制整備事業、介護保険事業計画などのコンサルティング・研修に携わる。
第5回 看護を強化した定期巡回サービスを提供したい!
前回紹介したように、私は1993年にデンマークを視察しました。そこで学んだのは、看護師と介護職が一体となって在宅生活者の生活と医療的なケアを保障することが重要、ということでした。
■デンマークで夜間のケアに同行
デンマークでは、訪問看護師とヘルパーがチームで利用者を訪問するところに同行させてもらいました。夕方5時、事務所には、日中の担当の看護師やヘルパーから申し送りのFAXが入り……
【筆者紹介】宮崎和加子(みやざき・わかこ) だんだん会理事長
訪問看護のパイオニアで認知症ケアの先駆者としても知られる。東京都初の訪問看護ステーション所長や全国訪問看護事業協会事務局長などを歴任した。
第5回 国際空港の検疫で陽性の患者をホテルに訪問
■COVID-19は震災のような大災害
昨年春に緊急事態宣言が発令されて約1年。秋以降の第3波とされる事態に、緊急事態宣言は1月、再度発令され、感染の抑え込みが始まりました。まだまだ油断はできませんが、今月中には解除されればと思っています。
こうした状況下、訪問薬剤師として、地域の薬局としての新たな役割が生まれました。思いがけない業務を依頼され、「それも地域薬局が担うのか」と考えさせられたと同時に……
【筆者紹介】高橋眞生(たかはし・まなぶ) ㈱カネマタ代表取締役
在宅医療薬剤師。千葉・船橋で保険調剤薬局を展開。訪問薬剤管理を長年実践し、在宅患者からの信頼も篤く地域医療に貢献している。
第9回 コロナ患者はかかりつけ医が診るべきだ
■無症状・軽症高齢者は入院の必要なし
日本在宅ケアアライアンスは昨年、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、「行動方針」を4月に、「対処方針」を6月に発表した。当時、陽性者は入院することとされていたので、陽性者を在宅で実際に診ることは想定していなかった。
夏が過ぎて秋になり、11月以降、新規感染者の増加傾向が強まり始めた。厚労省は11月22日の「事務連絡」で、「病床確保や都道府県全体の入院調整に最大限努力したうえで、なお、病床がひっ迫する場合」と条件をつけ、以下のように通知した。
「入院勧告等ができるとしている者のうち、医師が入院の必要がないと判断し、かつ、宿泊療養施設(適切な場合は自宅療養)において丁寧な健康観察を行うことができる場合には……
第7回 “仕組み”の破綻を示す「入院・療養等調整中」
2月に入り、医療の逼迫度合いは、1月上旬に比べると多少は改善したように見える。
何を見てそう思うかというと、東京都や国が発表する新型コロナウイルス感染症の患者動向だ。東京都の「自宅療養者の数」と「入院・療養等調整中」の人数、国の「社会福祉施設での療養者の数」などに注目している。
■8000人と6000人
第3波がピークだった1月半ば、東京都では「自宅療養」者が約8000人、「宿泊療養」者が約1000人……
【筆者紹介】時不知すずめ(ときふち・すずめ) 新聞記者
医療や介護について取材する全国紙記者。わが家は都心区にある。正午と夕方に区長のアナウンスがある。いつも変わらぬ内容だ。手洗い、消毒、マスク、緊急事態宣言下では不要不急の外出自粛。しかし、1月下旬、「入院までに時間がかかる」という趣旨のフレーズが入った。それまではなかった。聞いた瞬間、東京は医療崩壊している、と実感した。2月に入り、公表される感染者数も、「入院・療養等調整中」の数も減ってきた。しかし、アナウンスの内容は変わらない。病床の逼迫はまだ緩和されていない、と思っている。
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