インナータイプのアシストスーツ「DARWING UT-Rise」発売 薄く涼しく着やすさを追求〔ダイヤ工業〕🆕

2024年 10月 2日

 ダイヤ工業(岡山市)はインナータイプのアシストスーツ「DARWING UT-Rise(ダーウィン ユーティーライズ)」を発売した。現在、アシストスーツは服の上から装着するアウタータイプが主流だが、装着性の良いインナータイプを普及させることで、さまざまな現場で働く人にとって、アシストスーツがより身近なものになることを目指す。

筋肉スーツからアシストスーツへ
 ダイヤ工業は1963年の創業で、主に接骨院・鍼灸院・クリニックなどに向けて、日常用・スポーツ用サポーター・コルセットの開発・製造・販売を行っている。

 同社がアシストスーツを手掛けるようになったのは、筋肉スーツを製品化したことがきっかけ。「首から指先までほぼすべての部位のサポーターを作っており、サポーターの集合体のようなものを作りたいと考え、全身筋肉スーツを開発することにした」と広報の藤原舞利子氏は説明する。

 特徴は「二層構造で膝を持ち上げるパーツがあるので歩くのを補助したり、腰のサポートパーツが腰を支える機能を設けたこと」(藤原氏)。

藤原舞利子03

藤原舞利子氏

 高齢者がいつまでも元気に活躍するサポートがしたいと考え開発したものの、スポーツから作業現場での労働支援など、特にジャンルは特定しなかったが、同製品を見た竹中工務店から建設作業に特化したインナーの依頼があり、建設作業における動作をサポートするインナーを開発した。

 これを機に「労働軽減」に焦点を当てた製品の開発に取り組むことになり、2017年に最初のアシストスーツ「DARWING SATT(ダーウィン サット)」を発売した。

サポーターのように手軽に装着
 DARWING SATTは中腰姿勢の負担を軽減する製品で、骨盤サポーター・背中アシスト・臀部アシストの3つの機能により、背中から臀部までしっかりサポートするとともに、背部の伸縮ゴムが脊柱起立筋を、臀部の伸縮ゴムが臀部をサポートすることで、起き上がりと立ち上がりの負荷を軽減するものだ。

DARWING SATT04

DARWING SATT

 同製品はアウタータイプだが、担当者の1人である営業部アシスタントマネージャーの白神久嗣氏によると「アシストスーツと聞くと、メカニックなものをイメージする人が結構いるが、これはサポーターから派生しているので、『サポーターの高級版』と言われることが多い」という。

 「装着が簡単で、着心地が良く、軽いという3点は、長年にわたり医療用のサポーターを開発・製造してきた自社の強みだと思っている」と白神氏は強調する。

 DARWING SATTは物流や農業、建設、介護など職種を選ばずに使える、いわば汎用タイプとして開発された。その後、企業や施設などからさまざまな相談を寄せられたのを受け、作業内容に特化した製品を共同開発していった。

 例えば、ぶどうの摘粒作業などで腕を上げっぱなしにする負担を軽減するため、JA岡山と「bonbone MOTT」=現在はリニューアル品「DARWING Agerelude(ダーウィン アゲレルデ)」=を、建設現場ではまだ人の手で穴を掘らなければならないことがあるので、掘削作業を楽にするため、清水建設と「DARWING ワーキングアシストAS」を、それぞれ共同で開発し製品化している。

DARWING Agerelude01

DARWING Agerelude

 こうしたダイヤ工業の動きと並行して、他社は外骨格型のアウタータイプを次々に製品化したが、使ってみると「重いし動きにくい上に値段が高い」という声が利用者から寄せられるようになり、各社はソフトなタイプのアシストスーツを製品化するようになった。

インナータイプのDARWING UT-Rise
 そうした流れの中で、同社では顧客の声をヒアリングした結果、過去に筋肉スーツを作った経験から「インナータイプのアシストスーツを作れば、より多くの人たちに使ってもらえるのではないか」(白神氏)と考え、DARWING UT-Riseを開発することになった。

 アウタータイプの場合、固い樹脂パーツがある事で例えば介護現場では利用者に樹脂パーツが接触する事が考えられ、自動車製造では自動車を傷つけてしまうことが懸念されるため、導入のハードルになっている。

 また、着用したことのないアシストスーツを着ることに対する心理的な抵抗や着用による動きにくさ、装着の手間などから、導入が進まないということも、DARWING UT-Rise開発の背景にあった。

DARWING UT-Riseサイズ変更

DARWING UT-Rise

 製品化にあたっては①暑さ対策②装着性③サイズ設定の3点が大きな課題となった。暑さ対策では、密着感をなくし、ゆったりとさせることで熱がこもらないようにして、素材を全面メッシュとしたが、試用の結果、ずれやすいことが分かった。そこで、すべてをゆったりさせるのではなく、ずれとのバランスを取りながら、部分的に密着させることにした。

 装着性については、スーツ全体を限りなく衣服の感覚に近づけることで解決。サイズに関しては、男女の体格差や細い・太いなど体形の差を加味し、LとMの2種類とした。

 ちなみにUT-RiseのUTは「Ultra Thin(極薄)」を、Riseは「起き上がる、体を起こす、上昇する、向上する」を意味している。

 製品はトップスとボトムスに分かれていて、衣服のように着用できる。トップスとボトムスの背中部分にそれぞれアタッチメントが付いていて、樹脂バックルで連結する。ボトムスにはアシスト力の強さを調整する「調整ベルト」が付いている。

 アシスト力が必要になったら、調整ベルトを引っ張ってオンにする。アシスト力が必要なければ調整ベルトを緩めるか、アタッチメントの連結を外すことでオフになる。

アタッチメント接続03
バックル02

トップスとボトムスはアタッチメントで連結(左)。強さは調整ベルトで調整するか(右)、アタッチメントを外すことでオフにする

 なお、夏場の暑さ対策として、保冷剤ポケット付きベストを着用したり、空調付き作業服を着たりすることで、さらに快適に作業することができる。

 DARWING UT-Riseの今後については、汎用的な現状の製品を基に、業種によって専用品化したものを開発していくことが計画されている。また、これまでも企業とタイアップして製品づくりを行ってきたが、オーダーメードによる専用品化も念頭に置いている。

日常に溶け込むものに
 現在は全身タイプのアシストスーツが主流だが、「上半身のみ」「下半身のみ」など、独立した部分で完結できるようなタイプも考えている。また、「特に腕のアシストに関するニーズは十分ある」(白神氏)、そうした製品を開発していくこともテーマの1つとなっている。

 さらに、DARWING UT-Riseはインナータイプであることから、個人支給になる部分は企業導入のハードルになるケースもある。アウタータイプであれば、現場のハンガーにかけておき、必要な人が必要な時に共有して使う形になるが、インナータイプだと服の下に着るので、そうはいかない。

 この点に関しては「アシストスーツがもっと普及し、安全対策の為に着用義務までにならないとしても、ほとんどの企業が使うようになり、どれを選ぶかというような時代になれば、インナータイプが支給されていくのではないか」と白神氏は話す。

白神氏01

DARWING UT-Riseを手に取る白神久嗣氏

 現状でもヘルメットや安全靴などは着用が義務付けられているし、炎天下に屋外で作業する多くの人が空調付き作業服を着るようになっていることを考えれば、アシストスーツがそうした製品と同様の扱いになっても不思議はない。

 白神氏はアシストスーツについて「特別なものというよりは、着る事があたり前のもの、あるいは着ていても自然に溶け込むものに進化すること」を期待している。

このカテゴリーの最新の記事

介護施設向け誤薬防止アプリケーション「メディアシ」 タカゾノの分包機と連携し手間をかけずに服薬を確認〔理経〕🆕

 技術商社の理経(東京都新宿区)は介護施設向けの誤薬防止アプリケーション「メディアシ」を開発し、6月から提供を開始した。グローリー社のエンジンを利用した顔認証技術と、薬局向け製品などを製造するタカゾノ(大阪府門真市)の分包機を連携することで、介護現場での主要事故の1つである誤薬を、手間をかけずに防止することを可能にした。
 
■自社開発の顔認証技術を活用
 1957年創業の理経はIT・エレクトロニクスの専門商社で、システムソリューション、ネットワークソリューション、電子部品及び機器という3つの分野で事業を展開している。
 
 商社なので基本的には国内外のメーカーの製品を顧客に提供したり、組み合わせてソリューションとして提供したりしているが、自社開発も行っており、顔認証システムもその1つだ。
 
 メディアシを担当するAIシステムセールスグループの鈴木利之グループ長によると、この技術を使ってメディアシを開発することになったのは、2年ほど前にタカゾノの販売代理店の方と話をしている中で「高齢者施設では誤薬の問題が結構あり、薬局にいろいろ相談が来ているけれど…

患者情報の共有をICT化 ベッドサイド情報端末「ユカリアタッチ」開発・販売〔ユカリア〕🆕

 病院の経営支援・運営支援をはじめ、ヘルスケア市場において広範囲にわたる事業を展開するユカリア(東京都千代田区)は、医療従事者向けベッドサイド情報端末「EUCALIA TOUCH(ユカリアタッチ)」を開発し、普及に努めている。6月18日には新製品「EUCALIA TOUCH with(ユカリアタッチウィズ)」の販売を開始し、来年1月から順次納品・稼働する予定だ。
 
■医療現場の業務改善のためにユカリアタッチを開発
 ユカリアは2005年に設立された。さまざまな理由により経営的な課題を抱える病院に対して、戦略立案・資金調達・共同購買・地域連携・人材確保・建替え対応など、あらゆる機能を提供し、経営の抜本的な改善と持続的成長を支援する病院経営サポートが同社の中核事業である。
 
 コンサルタントに限らず、時には同社に所属する医師、看護師などの専門チームを派遣し、あらゆる面において伴走支援が可能である点が強みである。
 
 日本の病院の7割が赤字という中で、「ヘルスケアの産業化」をビジョンとして掲げ、「医経分離」を提唱し、医師をはじめとする医療者はその専門性の発揮に注力し…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

トイレの見守りと排泄物チェックを自動化 介護者の負担を大幅に軽減〔NECプラットフォームズ〕

 高齢者施設にとって利用者のトイレの見守りと排泄物のチェックは重要な仕事だ。しかし、利用者のトイレでの排泄状況を全て見守り、毎回確認して記録するのは介護職員にとって大きな負担となる。
 
 NECプラットフォームズの「NECサニタリー利用記録システム」は、これらを自動化することで、その負担を大幅に削減するとともに利用者の自立支援を可能にした。
 
■コンパクトな設計で職員自ら容易に設置
 このシステムは「排泄検知ユニット」「制御ボックス」と、共用トイレで使う「個人識別センサ」で構成されている。
 
 「排泄検知ユニット」の光学センサで着座と排泄内容を検知し、制御ボックスで利用状況や排泄物の状態を分析する。そのデータは職員のタブレット端末やスマホに送られる。
 
 介護記録ソフトと連携している場合は、データがソフトに自動で記録される。共用トイレでは「個人識別センサ」により誰が使用しているかを識別し

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

病院・薬局での待ち時間を大幅に短縮 医療費後払い機能など搭載のアプリを提供〔プラスメディ〕

 プラスメディ(東京都千代田区)の「MyHospital(マイホスピタル)」は、医療費の後払いや処方箋情報を薬局へFAX送信する機能などを搭載した医療系アプリである。これを使うことで、患者は会計や処方箋の受け取りなどのために長時間、待合室などで待つ必要がなくなる。今年1月には、さらに導入しやすい「wellcne(ウェルコネ)」の提供を開始した。
 
■自らの体験を基にアプリを開発
 プラスメディは2016年、代表取締役社長兼CEOの永田幹広氏が仲間3人と立ち上げた。そのきっかけは永田氏が指定難病の潰瘍性大腸炎にかかったこと。病院に朝行っても、薬をもらって外に出ると夕方になっており、「おかしいのではないか」と考えたのが始まりだ。
 
 永田氏がもともと新規事業を立ち上げるビジネスをやっていたため、仲間とこの問題を解消しようとプラスメディを創立した。
 
 当初からアプリの活用を考えていたところ、永田氏の高校の同級生である慈恵医大病院の医師からアルム社を紹介された。
 
 同社はいろいろな医療系アプリを開発しており、その中にMyHospitalにつながる技術があった。しかし、それを事業化していなかったため、プラスメディが17年に技術を譲り受け、自分たちが使いたい形に作り替えていった。
 
 実証実験を慈恵医大病院で行い、医師や看護師、患者などから意見を聞いた上で実用化にこぎつけ、19年7月1日、東京都済生会中央病院(東京都港区)で稼働を開始した。
 
 同病院がMyHospitalを採用することになったのは、「カルテは誰のものか」という議論があった中で、当時の高木誠院長が…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

介護用動画センサーの草分け 高齢者施設での転倒防止に貢献〔キング通信工業〕

 キング通信工業(東京都世田谷区)は、防犯センサー技術を生かして2014年、他社に先駆けて介護用のシルエット動画センサーを開発・発売した。今年1月にはユーザーの意見を反映した新製品を上市。センサーの普及により高齢者施設でのさらなる転倒防止を目指す。

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(11月25-12月1日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS