東京・品川 フィットネスジム P2M joiru(ピーツーエム ジョイル)
正面入り口から室内に入る。整然と並んでいるのは、ドイツ・milon(ミロン)社製の真新しいマシンだ。(写真1)。
写真1

この10月にオープン予定の、30歳以上に限定したフィットネスジム「P2M joiru(ピーツーエム ジョイル、以下joiru)」を訪問した。P2Mは東京・品川に展開する小規模ジムのグループで、これまで「フィットネス・ラボP2M(以下P2M)」「P2M JUNIOR(ジュニア、以下JUNIOR)/Runway(ランウェイ、以下Runway)」の2店舗が稼働している。大手が全国展開するフィットネスとは一線を画す、いわば地域密着型ジムである。
カード1枚で負荷やシートを調整
joiruに入会すると、まずICカードが1枚支給される。測定装置ミロナイザー(写真2)にカードをセットして少し離れて立てば、ユーザーの手足や胴の長さ、関節の位置がスキャンされる。決められたポーズで身体を動かせば、柔軟性や敏捷性が測定される。ミロナイザーを使った測定のほか、オプションで遺伝子検査も受けられる(別途料金)。身体の状態を客観的に数値化・見える化し、運動のモチベーションにつなげていく。得られた情報は、クラウドに保存される。
写真2

計測をすべて終えると、インストラクターがトレーニングプランを作り、そのプランに基づいてトレーニングが始まる。先ほどのカードを筋トレマシンの読み取り部にかざすと(写真3)、鍛える部位がモニター上に表示され、数秒後、ユーザーに最適な負荷とシートポジションが自動で設定される。よくあるタイプのマシンでは、負荷やシート位置の調整は手動で、ピンを差し替えたりしなければならないが、そうした作業は不要だ。
写真3

1つのマシンで60秒、筋トレを行う。モニターに表示される緑色の円の動きに合わせ、適切な速度で動かす(写真4)。60秒トレーニングしたら30秒で結果が自動的に評価され(写真5)、隣のマシンに移る。同様にカードをタッチすれば、これも自動調整される。60秒トレーニングして、また隣に移る…のサーキットトレーニングは、筋トレ6種類と有酸素運動2種類の計8種が、トータル17分30秒で行える。時間の無駄を省いて効率的にトレーニングできるのだ。仕事や家事や子育てに忙しい30代でも、無理なく運動できる。
写真4

写真5

トレーニング内容はクラウドに記録され、蓄積されていく。どこを鍛えてどう変わったか、筋肉のバランスはどうか、身体の変化の軌跡が残る。トレーニングを続けて筋力がアップすれば、重点的に鍛える部位を変えるなど、メニューも更新される。トレーニング内容と成果がひもづけられ、消費カロリーもわかる。トレーナーが端末を持っていれば、負荷を遠隔操作できる。過去のトレーニング内容を呼び出すこともできるし、世界中のmilonユーザー内ランキングもわかる。
目的に合わせた効果的なトレーニング
joiru にはmilonのマシンのほか、室内の酸素濃度が富士山5合目と同程度に設定されて高地トレーニングができる低酸素ルームHigh Altitude Training(ハイ・アルチチュード・トレーニング、写真6)、乗るだけで音波が全身の水分を刺激して活性化するSONIX(ソニックス)(写真7)、グループレッスンのスペース(写真8)が備えられている。ハイ・アルチチュード・トレーニングでトレッドミルに傾斜をつけてウォーキングすれば、呼吸機能や細胞が鍛えられる。30分で2時間分の脂肪燃焼効果を得ることも可能という。
写真6


写真7、写真8

決して広くはないが、このように効果的な機材・設備を揃え、目的に合わせた合理的・効果的なトレーニングができそうだ。従来、トレーニングは勘や経験に頼る部分も大きかったが、徹底した身体計測とICTを取り入れた最新のマシン・装備によって、合理的なトレーニングが実現した。そして、作成したプランで設定した目標を達成すると、joiruは“卒業”となる。これまでのデータはストックされるので、卒業後は定期的に運動診断したり、ほかのジムに移ってトレーニングを続ける際に活用できる。
年齢と性別を明確にして展開
これだけなら、joiruは最新のマシンを備えたフィットネスジムの1つにすぎない。joiruを含むP2Mグループの価値は、何のためのフィットネスかを明確に掲げていることにある。それは、いわば“地域全体の介護予防”であり、P2M は“地域の人を健康にする”ためのフィットネスなのである。
1号店であるP2Mは2018年7月にオープンした。milonのマシンなど仕様はjoiruとほぼ同じだが、入会資格は40歳以上。身体測定メニューはjoiruより多く、歩行姿勢や糖化度(低いほど健康とされる)、自律神経も測れる。最大の特徴は営業時間で、9時~13時30分と、16時30分~22時に設定されている。飲食店のように、午後に閉める時間帯があるのだ(その理由は後述する)。
2019年オープンのJUNIORは、名称のとおり小中学生向けのジム。昨今、子どもの多くは、スマホやゲーム機の普及によって、運動の機会が減っている。そんな子どもたちに、正しい運動習慣を身に付けてもらい、「足が速くなりたい」「運動会で活躍したい」「チームでレギュラーになりたい」などの目標を叶えるためのプログラムが用意されている。マシンには頼らず、年齢に合わせた科学的なトレーニングを提供する。
JUNIORと同じ場所で展開するRunwayは女性限定で、これまで22歳以下を対象としていたが、10月からは29歳以下に拡大する。無理なダイエットで栄養が偏り、不規則な生活や運動不足で不健康になりがちな若い女性を、「誰かに“憧れられる”存在へ」変えることを目指す。トレーナーによる評価、改善を通して理想の自分を目指すパーソナルトレーニングが中心となる。
一般介護予防事業をフィットネスで
これらP2Mグループは、品川区の委託で地域の高齢者を対象に介護予防プログラムを提供している。区の介護予防・日常生活支援総合事業の一般介護予防事業(以下、予防事業)に位置付けられ、名称は「カラダ見える化トレーニング」。カラダ見える化トレーニングには、65歳以上で①日常生活に支障はないが身体を動かす機会の少ない人向けの「筋トレマシンクラス」と、②もの忘れが気になる、日常生活でつまづきやすくなった、転びやすくなったと感じる人向けの「しなやかストレッチクラス」がある。P2Mは午後、フィットネスを休んで①を、Runwayでは午前中に②を実施している。そして3号店joiruでも、新規の予防事業を実施する予定だ。
P2Mの予防事業は2年前に始まり、年間140人が参加している。予防事業は1期6カ月と、参加できる期間が決められていて、終了後は個人で活動を続けるしかない。そのため、そのまま運動をやめてしまうことも少なくなかった。しかしP2Mで予防事業のプログラムを受けた高齢者は、予防事業が終わった後は通常会員としてP2Mでトレーニングを続けられる。その場合、6カ月間は会員価格から35%引きの料金となるという。介護予防の効果を継続するためにも、これはメリットだ。