■定期巡回サービスのデメリット
身体0は毎日の生活を支えるため、1日に複数回、短時間訪問する。人の生活は、1日24時間の生活リズム――起き、食べ、排泄し、動き、そして寝る――の繰り返し。週単位や月単位のリズムではないから、週1回だけ長時間訪問する、といったサイクルでは、生活は成り立たない。
新生メディカルの今村あおい代表取締役は「身体0は、この生活リズムをしっかり支えるためにヘルパーが毎日決まった時間に訪問する、活用しやすいツールです」と説明する…
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◆ユニット間の壁をなくしたグループホーム
瑞穂市には新生会の複合型施設が3カ所ある。その1つ「もやいの家瑞穂」は2階建てで、1階に認知症対応型デイサービスセンターと介護予防拠点(地域交流スペース)、2階グループホームが入る。
「もやいの家瑞穂」のグループホームでは、通常は設けられているユニット間の壁がない。代わりに天井から鴨居の高さまで「垂れ壁」がつけられている。
事実上、2ユニットを一体的に運用し、夜間の1人勤務の職員の負担を軽減する。若手職員が夜勤のときは、ベテランの仕事ぶりを間近でみることになって、職員教育につながる。
◆居室を窓側に配した「個室型多床室」
リハビリセンター白鳥(しろとり)はより多くの人に個室を提供するため「個室型多床室」というアイデアを打ち出し、実現した施設である。1階のカフェでは職員手作りのパンや駄菓子などが販売され、近所の子どもたちが訪れる。
■個室型多床室
池田町の白鳥地区にある「リハビリセンター白鳥」は2階建てで、1階にリハビリルームとコミュニティカフェ、グループホームなどがある。2階は特別養護老人ホームとショートステイを合わせ45部屋で、ここが全国でも唯一の個室型多床室である。
一般的に多床室は4つのベッドがカーテンで仕切られ、ベッドとベッドの間の空間が通路だ。個室型多床室ではすべての居室を窓側に配置し、ベッド間の空間を個室の外にまとめ、ゆったりした共有スペースを設ける構造とした。このスペースはセミプライベート空間である。
なぜ、このような造りにしたのか。管理者の砂川淳一さんは「多床室には、ベッドの位置が窓側と廊下側に分かれる、プライバシーが保てない、といったデメリットがある」と指摘し、「そのデメリットを可能な限り取り除き、多床室でありながらも個室のような環境で過ごしていただける空間と、そして広い共有スペースを確保した」と答えた。「そうすることで、日常生活の支援を充実させることができる」。
居室は寝室の役割に限定する一方、さまざまな広さの共有スペースがあちこちに設えられている。大画面テレビや移動式菜園が設置されたパブリックスペース、1人で椅子に腰かけてうとうとしたりできるセミプライベートスペースなど、入居者が思い思いに過ごせる場所とした。
各居室は2.4m×2.7mと確かに広くはないが、すべての部屋に大きな窓があり、ベッドで横になっても外の景色が見える。部屋の入口の引き戸は障子で、外からぼんやり光が入ってくる。こうした工夫により、狭さの割に圧迫感は感じない…
◆濃尾平野を一望する高台の一戸建て有料老人ホーム
社会福祉法人新生会は本部のある岐阜県池田町のほか、岐阜市・瑞穂市・大垣市に10施設を展開している。いずれも設立の意図が明確な複合施設で、先進的な取り組みを行っている。その中から5カ所を紹介する。第1弾は日本初の一戸建て・住宅型有料老人ホームのある「サンビレッジ宮路」である。
■サンヒルズ ヴィラ・アンキーノ
池田町、池田山中腹に設けられたサンビレッジ宮路は、一戸建て有料老人ホーム「サンヒルズ ヴィラ・アンキーノ」「デイサービスセンターちゃぼぼ」「グループホーム弥生」などで構成される。
サンヒルズ ヴィラ・アンキーノは、介護が必要になっても自由で健康的な暮らしをするためにつくられた。豊かな自然の中で、元気なうちは別荘として余暇を過ごしたり、早めに住み替えて落ち着いた生活を楽しんだりできる。
要介護状態になれば、訪問診療・訪問看護・訪問介護や併設のデイサービスを利用して暮らしを維持する。
認知症が進めば、グループホームに移り住むこともできる。単身用と夫婦用があり、自分のライフスタイルに合わせ、32㎡のシングル、45㎡のセミダブル、56㎡のダブルの中から選べる。
室内にはエアコンや床暖房、浴室、シャワートイレ、IHキッチンなど、日々の暮らしに必要な設備が備え付けられているほか、ナースコールと夜間定時の2回の見回りにより、安全も確保されている。
居室からは濃尾平野を一望でき、共用スペースに集会所・読書コーナー・喫茶室、屋外には小さな畑もある。敷地内には花が咲き、職員が育てている果物や野菜は自由に採れる。
周辺には梅林や茶畑、温泉のほか、渓流沿いに桜並木がある町営の大津谷公園もある。シャトルバスで買い物や散策に出かけることも可能だ。
各戸は独立しているものの、ウッドデッキで連結されているので、隣の家と気軽に行き来できる。
■デイサービスセンターちゃぼぼ
併設のデイサービスは、同じ池田町内にある「リハビリセンター白鳥」「サンビレッジ新生苑」のデイに比べると、比較的要介護度が低い人の利用を想定したプログラムが組まれている。
サンビレッジ宮路の廣瀬京子施設長は「手工芸やリハビリをしたり、梅林で自ら収穫した梅を使った梅酒や梅干しづくりを行ったり…
岐阜県内でケア事業を幅広く展開する社会福祉法人新生会と株式会社新生メディカルは、介護保険制度以前から先進的な取り組みで知られてきた。この特集では、現在の新生会グループが提供するケアを多角的に紹介する。
株式会社新生メディカルは訪問介護、通所介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、福祉用具貸与販売などの介護保険サービスや、保育所事業を提供・運営している。社会福祉法人新生会の石原美智子名誉理事長が1977(昭和52)年に創業し、90年に株式会社化した。石原さんは現在、新生メディカルの代表取締役会長でもある。
■8人の利用者への訪問に同行
同社が現在力を入れているのは、訪問介護の20分未満の身体介護サービス「身体0(ゼロ)」だ。20分未満の在宅訪問でどんな身体介護を提供しているのか、8人の利用者への訪問を同行取材させていただいた。
訪問日時は5月7日夕方(3人)、8日朝(1人)、夕(5人)で、うち1人は夕と朝の両方に同行した。ヘルパーは勝野美雪さん、髙木美香さん、中川千絵さんの3人。皆さん、ヘルパー歴10年ほどのベテランである。
利用者8人は全員独居、年齢は78歳から99歳。要介護度は最も高いBさん・Hさんで要介護4。B、C、D、Fさんは認知症がある。8人の住まいは一戸建て住宅(1人)、一戸建て有料老人ホーム(2人)、集合住宅(5人、同一建物)である。
3人のヘルパーは20分(未満)の間に、上記のほかにもスマホに業務開始と終了を入力し、記録も残す。室内をきびきびと動き回る間にも、利用者に話しかけ、気を配り続ける。エアコンの温度を調整したり、冷蔵庫の中を見たり、照明を点けたり消したり、無駄な動きは一切ない。
■利用者の選択とこだわりを尊重
Aさんは今回同行した8人中、唯一、一戸建て住宅に暮らしている。ヘルパー勝野さんは屋内に入ってすぐ、Aさんの居室ではないところの窓が開いていることに気づいた。Aさんは前夜から開けたままと説明し、閉めなくていいと言う。勝野さんは室温を確認し、そのまま窓を開けておいた。
Cさんへのケアは夕方と翌日朝の2回、同行した。朝の訪問で、ヘルパー髙木さんはCさんが朝食を調理するのを隣で見守る。
Cさんがみそ汁に卵を割り入れた際、殻のかけらが入ってしまった。それに気づいた髙木さんが取り除くのかと思って見ていると、髙木さんは「殻が入ってしまいましたね、取れますか?」と促し、見守り続けた。そしてCさんが「ほんとや、取らな」と言いながら…
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