第6回 あなたの思いを探る――人生を遮断しない入院医療

2021年 7月 14日

 退院支援が必要な患者へ伝えられる医師からのIC(インフォームドコンセント)内容は、つらいニュースです。コロナ禍で、家族面会の制限があり、このようなつらい説明さえ……
【筆者紹介】宇都宮宏子(うつのみや・ひろこ) 在宅ケア移行支援研究所宇都宮宏子オフィス代表
訪問看護師や大学病院の退院調整看護師として研鑽を積み、2012年に在宅ケア移行支援研究所を設立。「退院支援の伝道師」として活躍する。
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第3回 時間軸で振り返る事例検討――見えてくる匠の技、退院支援の3段階

 「病院という空間では、見えないです」。
 がん患者さんの在宅療養移行支援過程を、病院・在宅で働く看護職と一緒に振り返り事例検討会をしたあと、1人の看護部長がつぶやきました。「対話の時間が持てないというのは言い訳になるけど、『病気を治して欲しい』という治癒を諦められない患者・家族の姿しか、見えないんです」。
 病院医療者にとっては、在宅医療者からのフィードバックがなければ、退院後の様子が見えないんですよね。■「最期まで母はおかあちゃん」
 1人暮らしでも「家がええなぁ」と、在宅療養を選択した患者さんは、夫や子供たちと過ごした思い出が詰まった我が家で、コロ(犬)が見守る中、息を引き取りました。
 なんと、娘さんが、お母さんの在宅療養の様子を地元の新聞に投稿されていたのです。娘さんは……

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第2回 2002年、訪問看護をやめて病院に戻ることを決めた理由(下)

■骨折した認知症の母を「入院させなアカン?」
 暮らしの場だからこそ、力を発揮できる。1990年代、在宅ケアの経験の中で、私にそのことを教えてくれたのは、はなさん(仮名、80歳代女性)だった。介護保険制度が導入される前は、通所介護の相談員がケースマネジメントをしていた。つながりのあった通所介護(特養併設)の相談員から、「便が出なくて、イレウスの心配があるため病院へ連れて行っている方がいる。飲み込みの問題も出てきた。長く家にいられるように訪問看護で支えてほしい」と相談され、はなさんの家を訪問した。
 はなさんは重度のアルツハイマー型認知症だった。「はなさ~ん、宇都宮です。おはよう!」と挨拶すると、はなさんはクシャクシャな笑顔になって、そこから訪問看護の時間が始まった。はなさんはパンツ式おむつを着けていたけれども、いつもオシャレな服で過ごしていた。訪問看護では健康チェックをし、1週間の様子をうかがいながら、娘さんからの療養相談にのって、そのあと一緒に散歩をした。近所の子どもたちが「はなばあちゃ~ん」と集まってくる。老いて、少し物忘れが出てきても、子どもたちにとってはなさんは、これまでと変わらない存在なんだなと感じた。
 ある日、娘さんから少し泣きそうな声で携帯に電話が入った。はなさんが自宅で尻もちをついて整形外科を受診したところ……

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第2回 2002年、訪問看護をやめて病院に戻ることを決めた理由(上)

■病院医療では叶えられない願い
 2000年、在宅医療の現場で介護保険制度の幕開けを迎えた私は、これからは療養者1人ひとりに専門の相談員(介護支援専門員:以下、ケアマネジャー)が伴走して、望む暮らしを支え、生活の場で人生の幕引きを迎えられることが当たり前になると、大きな期待を寄せていた。
 2002年、私は、病院併設の訪問看護ステーション管理業務と兼務で「ケアプラン事業室」を立ち上げ、介護保険制度創設に向けた準備を担うことになっていた。600床以上ある病院で、医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)と同じ部屋に机を並べることになった。そのころ、多くの医療機関では、MSWが相談援助の一環として退院困難になった患者への転院調整や退院調整を行っていた。
 ある日、若いMSWが、「転院先を探している患者さんですが、私、悩んでいるんです」と、声をかけてきた。訪問看護部統括の私のそばには、MSWの統括責任者のデスクがあるから、すこし遠慮がちに(笑)。そして、「謙さん(仮名)は“もう、治らない事はわかっている。そしたら病院にいる意味はない”と自宅に帰ることを望んでいます。だから転院先を探すこともままならず、困っています」と打ち明けた。
 謙さんは膵がん末期の50歳代の男性。高校生の息子と中学生の娘、妻との4人暮らし。中心静脈栄養管理や痛みを緩和するための注射が今後も必要で、主治医は「当院は急性期病棟だから、ゆっくり入院できる病院へ移って頂きます」と本人と家族に話していた。
 治せない現実を受けとめ、主治医の意見に逆らってでも「うちに帰りたい」という謙さんの気持ちにきちんと応えようと……

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第1回 新型コロナをチャンスととらえて 今できる最大限のことを考えよう(下)

■病院も在宅もざわざわとして…
 オンラインミーティングでは、こんなことが打ち明けられました。
 病院では、家族の面会ができないため、緩和ケア病棟でさえ、家族が寄り添えずに亡くなった方もいました。高齢者が誤嚥性肺炎を発症しても、感染を否定できないという理由からかなかなか入院できず、入院できても絶飲絶食になります。病棟では、口腔ケアや食べるためのリハビリを積極的には行えないでいました。
 5月以降、訪問看護や訪問診療の新規依頼が増えているという現象があちこちで起こりました。入院すると家族と会えなくなるから、という理由で在宅医療によるサポートを選択しているのではないか。十分な退院支援がないままの在宅ホスピス移行も多い中、訪問看護師、ケアマネジャーが、これまで作り上げてきた連携力を最大限活用して……

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第1回 新型コロナをチャンスととらえて 今できる最大限のことを考えよう(上)

■今年も例年通り伏見稲荷で初詣
 皆さん、はじめまして。
 2040年、81歳になっている私は、どんな生活を送っているでしょう(笑)。もしかしたら、こちらの世界にはいないかもしれないですね。
 前職の大学病院を退職して、起業独立して今年は、9年目に入ります。
 一人暮らしの私は、1月1日の朝、京都の伏見稲荷神社へ、訪問看護をやっているナース仲間と、初詣に行っています。混み始める前の5時に集合です。
 彼女たちは、病院併設の訪問看護から独立して、「訪問看護事業所」を立ち上げ、経営しているいわゆる社長さん。毎年「商売繁盛」を祈願しているわけです。
 私は、健康で、講演会等に行けますように。そして日本のあちこちの地域にあった地域包括ケアシステムができて……

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